「想像力の欠落」

TOTO

2012年11月07日 08:45

「想像力の欠落」

 最近の犯罪には、あまりに幼稚なケースが目立つ。
 短絡的で、思慮分別に欠け、これから先、自分がどんなに惨めな人生を送るか、想像すらできていない。
 世の中への憤懣の爆発か、自暴自棄から起きた暴走か、容易に犯人像を割り出すことができる。
 高学歴で、一応の知識を持っていながら、人間および人生に対する想像力が貧しく、囲碁や将棋の世界でいう”読み”が全くない。そんな若者の犯罪がいつからか増えた。
 それをすれば相手はどうなり、自分もまたどうなるか、その結果がこの先なにをもたらすのか、恐ろしいほどに無知である。
 そんな犯罪発生の土壌にあるのは、幼い頃から文学に親しむことがない、それゆえ、人間の多様な生き方に学ぶことのなかった貧しいこころである。想像力の欠落はそこに起因する。
 受験勉強と実務知識の詰め込みで青春を送った気の毒な若者の存在を憂う。

豊水(「すこーれ」より)