- 「円高のトレンドは当面続く可能性大」 -
米ドル、英ポンドについては史上最高値更新。ユーロに関しては10年振りの1ユーロ=100円台を付ける等々、外国為替レートは歴史的な円高水準となっています。そろそろ円高も終息を迎えるとの意見もありますが、金利面から為替相場を見る限り円高は長引くと思われておいた方がよいでしょう。
外国為替レートはさまざまな要因で動きますが、中でも2国間の金利差や通貨の量によってその要因のほとんどを説明できるとも言われています。わが国は先進国の中でも突出して金利が低いのですが、その金利は名目金利を指しており、実質金利は高いというのを
ご存じではない方もいらっしゃることでしょう。
経済指標に名目値と実質値があるように、金利にも実質金利と名目金利があるのです。簡単に説明するならば、実質金利は名目金利
から物価の上昇率を差し引いた金利になります。
下の表は主要先進国の名目金利と実質金利の表ですが、わが国の名目金利は1番低いものの、実質金利はなんと2番目に高くなっているのがわかります。わが国の実質金利より高い豪ドルは、円よりも買われる=豪ドル高/円安になりやすい通貨と言えますが、他の通貨の実質金利はすべて円より低い状態=円高/外貨安になりやすいというわけです。
では、今後の金融政策は?と問われれば、わが国は消費者物価指数が1.0%を越えなければ、政策金利を引き上げることはないと
日本銀行総裁は2010年10月に明言しています。つまり、当面は超低金利政策が続くと考えるのが自然です。米国、ユーロに関しても見ていきましょう。
米国に関しては2010年8月のFOMCにおいて、バーナンキ議長が少なくとも足元の金融緩和政策を2012年8月まで続けると述べました。また、同年9月にバーナンキ議長は、さらなる金融緩和(QE3)を用意することもあるとも述べていることから米国の政策金利が引き上げられることは当面ないと考えられます。
ユーロに関しても、2011年4月、7月と2度の利上げを行いました。金利差拡大により、ユーロ高/円安となりかけたものの、ギリシアを始めとした南欧諸国の政府債務危機により、リスク回避姿勢が強まりユーロは大幅に売られています。
さらに、ユーロ圏全体の経済成長が急速に鈍化していることから、一転して政策金利が引き下げられるのではないかとも噂され始めて
います。足元以上の政策金利の引き上げは見込めず、むしろ政策金利引き下げも視野に入り始めたことから、実質金利は低下する可能性が高くなりつつあります。
このように米国、ユーロの実質金利が、わが国よりも高くなることは当面見込める状況にはありません。冒頭に述べたように円高は長引くと予測しておくべきでしょう。外貨預金などへの投資は時期尚早と思われます。
政策金利 消費者物価指数 実質金利
日 本 0.10% 0.20% -0.10%
米 国 0.25% 3.80% -3.55%
ユーロ圏 1.50% 2.50% -1.00%
英 国 0.50% 4.50% -4.00%
カナダ 1.00% 3.10% -2.10%
豪 国 4.75% 3.60% 1.15%
※平成23年10月11日現在、消費者物価指数は平成23年8月
の数値で対前年比。豪国の消費者物価指数は4~6月期の数値。
<執筆者>深野 康彦(ふかの やすひこ)より